2025年10月17日
統計データの一部を更新しました。
2025年10月9日 SBGがABBロボット部門を8000億円で買収
また大きな買収ニュースが飛び込んできた。SBGが重電大手ABBからロボット部門を53億7500万ドル(約8000億円)で買収する。
ABBの2024年の財務報告書のセグメント別情報によれば、ロボット部門の受注額は32.13億ドル(約4800億円)。ロボット部門の利益は、2023年が4.46億ドル(約670億円)、2024年が1.83億ドル(約280億円)。2023年の利益で計算すれば、利子を抜いた単純計算で資金回収に12年、2024年の利益で計算すれば資金回収に28年ほどかかることになる。
ロボット大手では他にファナックとドイツのクーカが有名。ロボットは決められた動きは得意だが、これまで場面に応じて臨機応変に対応を変えることができなかった。ネジ穴が1ミリずれてもロボットは対応できなかった。しかし、近年、自立的に状況を判断して柔軟に動きを変えるロボットが登場。その代表メーカーがクーカである。自動車製造の自動化を推し進めるテスラ社では多数のクーカ社製ロボットが使われている。こちらクーカは中国企業にすでに買収されている。
SBGがAIを使ったどのような産業用ロボットを構想しているのか気になる。
2025年10月8日 海外ファンドによる日本企業の買収
日本郵政がロジスティード(旧日立物流)に1422億円を出資して14.9%の株式(議決権)を取得するとの報道があった。
2023年、KKRは約6700億円で日立物流を買収し、上場廃止させた。今回の買収から、現在のロジスティードの時価総額はおよそ1兆円と計算される。KKRはわずか2年あまりで、3000億円近くロジスティードの企業価値を高めた、ということになる。この間、オランダの物流会社を傘下におさめているが、調べたところあまり大きな会社ではないようである。
ところでいつも疑問に思うのは、KKRやブラックロックがどのようにして企業価値を向上させているのかということである。ロジスティードの有価証券報告書をみて少し気になったのが、本体企業の従業員数が、買収前2022年3月末の1224人から、2025年3月末には881人に341人も減っていることである。連結会社の人数は増えているが、本体企業で人員のスリム化が進んだことをうかがわせる。転職サイトなどでもそのようなことが指摘されている。一方、平均年収は818万円から846万円に増加している。
人員のスリム化だけが企業価値が向上した理由ではもちろんないだろうが、ロジスティードの事例は、企業価値の向上が社会全体の豊かさにつながるのかどうか簡単には判断できないことを示しているように思われる。
ブラックロックの運用資産は1800兆円、KKRの運用資産はおよそ100兆円とみられており経済におよぼす影響は大きい。日本の名目GDPが約700兆円、東証全体の時価総額約1000兆円(2025年10月推計)がかすんで見えてしまう。海外ファンドは、各社をこういうふうにブランド再構築したとか、コンプライアンスをこう向上させたとか、女性の管理職、役員登用をこう進めたとか、ファンド全体としてもう少し積極的に情報を開示すべきなのではないだろうか。
海外ファンドが買収した元日本企業の変化について今後も注視していきたい。
2025年9月20日
最近、給付付き税額控除という言葉をよく聞く。
所得税減税は、所得税を支払っていない低所得の方には恩恵が全くない。そこで、所得税を支払っていない方には一定金額を給付して、この不平等を是正しようとするのが給付付き税額控除である。
国によりいろいろな仕組みがあるが、アメリカの場合(2018年)、子供一人当たり年2,000ドル(約30万円)の税額控除(税金から引ける仕組み)がある。しかし、これは所得税を納めている人にしかメリットがない。
そこで、アメリカでは所得税を払っていない方には子供一人当たり1,400ドル(約20万円)を現金で支給することになっている。これがアメリカの給付付き税額控除の仕組みである(わかりやすくするため、所得税の支払いが30万円に満たない方の説明を省略しています)。
ちなみに、日本では3歳未満の子供がいる場合、月1.5万円(年18万円)の児童手当が支給されている。アメリカは、これを税金制度を使っておこなっているだけだと言えなくもない。
日本の議論がどのように進むのか注意してみていきたい。
2025年9月17日
ウォールストリートジャーナルによれば、トランプ大統領が米企業の4半期決算の報告義務を廃止し、半期ごとの報告に移行することを望んでいる。4半期決算義務の廃止は、企業の負担軽減につながるとともに、長期的利益を見据えた安定した経営を可能にするとされている。
トランプ大統領は1期目にもこの課題を追求しようとしたが実現しなかった。同紙によると、ブラックロックのフィンクCEO、JPモルガンのダイモン元CEO、バフェット氏なども四半期決算義務の廃止に賛成の立場だという。
同紙は触れていないが、ラトニック氏やベッセント氏も同じ立場なのであろう。今後、さらに進展があるか注視していきたい。
2025年8月31日
最近、資金繰りが順調なのであろう、大型の海外企業買収ニュースが続いている。
8月27日、SOMPOが米アスペン・インシュアランス・ホールディングスを買収と発表。買収価格は34億8000万ドル(約5000億円)。アスペンの連結純利益は4億8600万ドルなので、買収資金の利息を無視すれば、アスペンの利益が横ばいでも7年で元が取れる。
8月25日、米キューリグ・ドクター・ペッパーがオランダのJDEピーツを157億ユーロ(約2.7兆円)で買収すると発表。JDEピーツの年次報告書をみると、2024年の税引き前利益は7.9億ユーロ。利子などを無視しても、JDEピーツの利益が横ばいなら回収に20年かかることになる。海外企業の買収は、文化や法律の違いなどのため、日本にかぎらずなかなかうまくいかないと言われている。こちらはどうであろうか。
同日、テルモが移植用臓器を保存・輸送する機器をてがける英オルガノックスを約15億ドル(約2200億円)で買収すると発表。日経新聞によれば、オルガノックスの24年12月期の純利益は753万ポンド。利益が横ばいなら、資金回収に140年かかる計算だが、今後の伸びしろの大きさを考慮しての買収であろう。ちなみに、有価証券報告書によれば、テルモの25年3月の税引き前利益は1545億円。
ちなみに少し前、日鉄によるUSスティールの買収があった。投資額は142億ドル(2兆円超)。USスティールの2024年年次報告書によれば、純利益(net earnings)は3.84億ドル。単純計算で、投資回収に37年かかる。
数年後、これらの買収結果はどうなっているであろうか。興味津々である。
2025年8月9日
今年、最低賃金が全国で1000円を超えることが見込まれている。
日本では、最低賃金とほぼ同じ賃金で働く人がほかの国より多く、その引き上げの影響は大きい。
厚労省は、最低賃金の引き上げによって、それまでの賃金が最低賃金以下になる人の割合(影響率)を公表している。それによれば、最低賃金を全国平均930円から961円に引き上げた2022年度の影響率は19.4%。これはほかの国よりかなり高い。
たとえば、2022年、フランスの最低賃金は10.48ユーロ(約1780円:現在の1ユーロ=170円で計算)、ドイツは9.82ユーロ(1670円)。欧州統計局は、最低賃金の105%以下の賃金で働く人の割合を公表している。その数字は、2022年フランスが8%、ドイツは12.7%。両国の最低賃金は日本の1.5倍以上だが、それでも最賃付近で働く人の割合は日本よりかなり低くなっている。ここでいちいち数字は上げないが、ほかの欧州諸国も同じである。欧州の6割程度の最低賃金にとどまるのに、その水準の賃金で働く方がきわめて多いのが日本の特徴といえる。
日本では、最低賃金引上げの影響力が大きいため、最低賃金引き上げに慎重な見方が少しづつ増えているが、欧州よりずっと低い水準なのにこんなに多くの人が最賃の水準で働いている今の経済構造、雇用構造こそ問題にすべきではないのか?そんなことを少し思いました。
2025年7月18日
セキュリティー強化のため、SSL対応のこのホームページ(https)を新たに立ち上げました。今後、データ更新はこのサイトでおこないます。
2025年7月12日
サーバー容量の関係で、過去の書き込みを「はてなブログ」に移動しました。
|
 |
Since September 15, 2009
|